京浜工業地帯バンザイ! の巻

              

              東京・品川から三浦市・三崎まで走る京浜急行。
             工場地帯と電車、どっちが先か知りませんが京浜急行と、それにほぼ並走する国道16号線沿線には非常に多くの工場があります。
             神奈川県に入るとNISSANの工場やTOYOTA系列の工場があり、また米軍基地もありますので、
             それらに関連した町工場と呼ばれる小さな工場まで、本当に沢山。
             働く場を求めて他府県からの移住者が増え、その方たちを対象とした飲食店街.....ざっくばらんに言えば飲み屋街や
             ドヤ街ができ、風俗的な物も発展してきたのだと思います。大抵工場地帯と駅を結ぶ間にそういった街があったりします。
             その街がどうやって出来たのか、どうしてここに商店街があるのか、とか背景を考えるのも面白いモンです。
             今「県立大学駅」となっている京急の駅名は、少し前まで「安浦駅」でしたし、お隣は今でも「堀の内駅」です。
             由来は違うのかもしれませんが、なんとなく臭います。
             
             産まれた時からそういう環境ですから、それが普通だと思ってましたが、20歳を過ぎて自分の世間が広がってきた頃
             都内の女性に「京浜急行は(乗客の)ガラが悪くて怖い」と言われ、初めて「そうだったのか〜」と気付きましたっけ。(笑)

             この店の川向こうは昔、田んぼや畑ばかりでしたが今は工場地帯ですし(但しあそこは看板も住所も出ていない様な
             所ばかりで ここが何丁目なんだか、何屋さんなんだかさっぱり判りません:汗)
             国道16号を上って横浜との境目辺りにも大きな工場地帯があります。更に遡上すると川崎、多摩川を越えれば大田区・蒲田。
             この辺りの埋立地の歴史はそのまま工場地帯の歴史とリンクするんじゃないでしょうか?
             横須賀市内の国道16号線も埋め立てに次ぐ埋め立てで、どんどん海側へ移っていきました。埋立地に工場を誘致して、
             更に埋め立てが進むと新しい埋立地に工場地帯を移し、旧工場地帯は商業地や住宅地になる、というのがある種
             パターンだったと思います。だから平成町という所がいきなり住宅街、商業地として出現したのは歴史的に稀有な事
             だったんじゃないかと思います。
             国道から旧道になってしまった道には普通の住宅にまじってポツンポツンと小さな工場があったりします。これらは
             昔工場地帯だった頃の名残りといえるでしょう。
蒲田裏通りの景色にちょっと似てます。

             
              ウチは、普通の楽器屋、中古屋とはちょっと違っているので(苦笑) パーツ類もバルクと呼ばれる
             パッケージの無い工場直送の物が多く、他にも一般に出回らない物があったりするのですが、それでも入手出来ない、
             というか 需要が無さそうだから大きな工場では作っていないパーツがあります。
             そりゃそうです。例えばムスタングなんて、単純にストラトよりユーザー数が少ないでしょうから。


             でも、どうしても必要な物もあったりして......そうなると自分の所で作るしかありません。
             何の伝手も無く、京浜工業地帯に突撃する様になりました。
             大抵の工場は取引先が決まっている、または大手メーカー直系だったりで、ある種排他的な雰囲気です。
             いきなりのアポなし突撃には驚かれるか怪訝そうな顔で見られます。(笑)

             しかしこんな時代になっても、電話やメールだけでは相手には何も伝わりません。
             やはり直接お会いして、サンプルなりをお見せして意図や熱意を伝えなければ何も始まらないのです。
             結局最後は「人」 対 「人」って事ですね。
             メールで問合せてシカトされた数なんて半端なくあります。
             だから、やっぱり突撃です。(笑) 但し大半の工場は一般の方からの注文は受けてくれません。私の場合は一応業者で
             ある程度のまとまった数を注文するから受けていただけたという話です。一般の方が突撃しても迷惑となる事がありますから
             絶対にやめましょう。


             最初はTS-9モディファイシリーズのトッププレートでした。
             このフットスイッチ部の黒いプレートです。
             金属の板材を折り曲げて溶接し、塗装しています。だから金属加工業さんなんだろうな、と横浜の工場地帯を
             探し回って飛び込むと 「こういうのはウチみたいな所の仕事じゃないんだよな」と。工場内を覗くと、
             なるほどもっと大きな物ばかりです。
             「どなたかお知り合いで、いらっしゃいませんか?」と尋ねると、いくつか電話して下さいました。
             「楽器屋さんなんだけどよぉ、俺も昔バンドやってたから助けてやりてぇんだよ」ってお言葉が聞こえた時は
             ちょっと涙がでました。
             そして紹介して頂いた所が店の川向こうでした。(笑) 急いで横須賀に戻ってお邪魔すると、「あぁ、これはウチじゃ無理だなぁ。
             横浜のXXXさんを紹介してあげるよ」と。ギャフンです。今、横浜から戻ったトコなんッスけど。(笑)
             またまた高速に乗って横浜へ。
             そちらでようやく作っていただく事が出来ました。メーカーレベルの数をお願いするわけではないので、
             ほぼ全ての工程が手作業です。
             過去、1日でこれ程横浜・横須賀道路を行ったり来たりした事はありません。(笑)


               それからBlackShoes。
              
             きっかけはChar氏のかつての愛器、「FUCK YOU」ダイモが貼られていたムスタングを採寸し、レプリカを作ろうという企画。
             結局諸事情でレプリカの製作は中止となったのですが、採寸の際完全にバラバラにして色々見ていたのですが
             どうもスプリング部の景色が違う。アームのタッチも違う。という事でスプリングの解析を始めました。

             スプリングの狙いは、アームダウン後に引き戻す力を強くしてチューニングの狂いを抑える事。
             調整の難しいとされるムスタングで本格的な調整をせず、割と簡単にチューンナップできるとパーツだと思います。
             乱暴な言い方をすれば、力技で捻じ伏せて狂わない様にしてしまう、という所でしょうか。             
             勿論、調整方法が分かっているいる方が更にきちんと調整すれば、更に更に安定する事は言うまでもありません。


             これまた京浜工業地帯を爆走です。
             今回は受け付けていただける工場が割りとすんなり見つかりました。
             そちらでは、ありとあらゆるムスタングのスプリングを持込み、計測していただきました。
             バネの性能(?)を示す単位はkgだと思っていましたが、今はニュートンという単位を使うと教えていただいた時は
             ちょっとお利巧さんになった気がしました。その後会う人会う人に「バネの単位って何だか知ってる?」と
             訊きまくり、「ん〜kg?」との答えに「ニュートンっていうんだよ〜」と得意気だった事は言うまでもありません。(笑)

             プリントアウトした測定表を見比べてサンプルを製作。ギターに搭載して試奏。また試作。
             こちらは測定の数値だけでなく、「人間の感覚」という事を理解して下さって、製作データに反映させてくださる
             素晴らしい工場でした。数値絶対主義の方が多い中、こういう方はなかなかいらっしゃいません。本当に感謝しています。
  


               お次はムスタングのアームを止めるスクリューと先っちょの樹脂チップ
              
               インチスクリューの方は知り合い伝手に紹介していただいたので割とすぐ出来ましたが、このマイナスドライバーが入る所、
              なんと手作業です。この幅と深さに拘って細かく指定しました。ちゃんとしたドライバーがちゃんと納まるサイズなのです。
              これを作っていただいた後、手締めタイプのインチサイズも作っていただきました。
              
               それから樹脂チップ。ヴィンテージのムスタングには本来付いているのですが、無くなってしまった物も多く、
              以前からお問合せいただいてました。
              F/Jには付いてません。最近はスポンジみたいな物が詰められてるみたいですが完全に役不足です。

              要はプラスティック樹脂なんですが、一口にプラスチック樹脂といってもその種類は物凄く、軽く目眩をおこしました。
              求めていたのはアームバーを引き寄せた時のトルク感、固すぎず、緩すぎず。尚且つアームバーが抜け難い事。
              まぁ〜いろんな材で試作しました。同じ樹脂でも色の付いている物と付いていない物ではトルク感に違いがあったりして。
              混ぜられた顔料が影響しているのでしょうね。
              材自体の固さも重要で、タッチが変わります。また耐久性にも差が出ます。
              同じ名称の材でも固さの違う物があり、本当に大変な数でした。
              結局理想とする材には出会えず、企画はそこで一旦頓挫します。
              これが手締めアームスクリューを販売し始めた頃ですから2005年頃の話です。結局アームスクリューにはゴムに近いような
              素材の物を付けて販売してきたのですが、やはりタッチに違和感を感じていました。
              でも、あの次点ではあれがベストな選択だったのです。他のプラスティック材では滑り過ぎてアームバーがすぐに
              抜けてしまったり、ネジが緩み易いのでした。

              そしてひょんな事から、ある材料に出会います。パッと道が開けた様でした。ところが!この材料、板状の物はあっても
              棒状の物が存在しない!板からくり貫くしかない!? 
               こんな風にね。となると販売単価が莫大なものに!
              ここでまた頓挫してしまいます。
              逆境に立つとなぜが燃えてしまう質のようで(笑)こうなるともう意固地といっていいかも知れません。
              またまた最初の工場に立ち戻って色々加工方法も模索していただき、ようやく完成しました。
              これもなんと1個1個手作業でバリ取りしていただいてます。
              ムスタングのアームバーがデロ〜ンとしちゃったり、すぐ抜けちゃったりする事なく、ピタッと止まります。
              このアームバーに吸い付く様な感触こそ、求めていた物でした。



              てなワケでウチにしか無い物がいくつか出来ました。この他にもアームバー等も作りました。
              あれも機械曲げだと、どうしても「しなやかな形状」「軟らかなカーブ」が再現できず、手作業です。

              少数では作ってもらえない物もある為、いくつかのアイテムはお仲間内でシェアしてもらいましたが、
              楽器店ではなく工房など修理関係者だけです。

              「ネジだバネだと、つまんない(単価低い)モンに時間使ってるからお前はダメなんだ」とある経営者の方に言われました。
              「そういうバネだネジだ、が後々効いてくる事もあるからがんばれ」と言って下さった方もいらっしゃいます。
              どちらが正解なのか判りませんが、とりあえず今貧乏である事は間違いありません。
              元々はエフェクター、ギター本体製作や修理の必要にかられて作った物をお分けしている、というスタンス。
              ウチは部品屋じゃないので、ギター本体もいっぱい買ってやって下さいね。(笑) 別に高級住宅地に家を建てたいわけでも
              高級外車を乗り回したいわけでもありません。存続していく事が、次の開発に繋がります。
              正直...........ネジとバネだけでは家賃払えないっす(泣笑)


               色々な工場にお邪魔して、色々な方にお会いしました。
              工場の外観はすごく立派で「ザ・ヤリ手!/会社急成長中!」みたいな方でも、グイグイくる割に大した物が
              作れなかったり、丸投げするだけだったり。いつの間にか担当が退社してて引継ぎが全くされてなかったり。
              逆に、「ここ大丈夫かぁ?」って敬遠しそうな外観の所ではガサツそうな怖い人が凄く丁寧な仕事だったり。
              やっぱり見た目では分からないモンです。

              BlackShoesを作っていただいた所は工場も立派で仕事も丁寧。でも何より、作った事の無い物を作る事を
              面白がって下さいました。ウチはメーカーではないので、大きな注文には繋がらないと分かっているにも
              関わらず、です。実は他の工場にも当たっていたのですが、お会いして「この人!」と決めました。
              アームチップも、こんなに単価の低い物なのに、面白がって色々な材で沢山のサンプルをご提供下さいました。
              こちらの「本気」に「本気」で答えてくださる。そういう方と一緒にお仕事させていただくと本当に幸せな気持ちになります。
              やっぱり最後は「人」対「人」なんですね。


               小さなネジひとつ、僅か数ミリのプラスティックにもこれだけのストーリーがあります、
              ちょっと面白いと思いませんか?



               最後に、いきなり飛び込んできた怪しげなニイちゃんに面白がって付き合って下さった工場の皆様、
              本当にありがとうございます。また面倒な話を持ち込むと思いますが(笑)付き合ってやって下さい。




                                                            2009年3月21日


info@sound-loft.com

営業時間:AM11:00〜PM7:00
 水曜+第1&3日曜 定休(他に買付け臨時休業あり)
今月の休業日案内はこちらから!
Sound Loft
URL http://www.sound-loft.com

〒239-0807 神奈川県横須賀市根岸町3-9
フラワービル2F
TEL/FAX 046-833-2088

当店MAP こちらからどうぞ!


中古屋のひとりごと 奇跡的に残っていたバックナンバーズ


























                「あれ?今回毒っ気が無くて物足りないですね?Rockじゃないなぁ」 というメールをいただきました。
              では、それ絡みのお話を。(笑)


              今現在、ウチの店は横須賀商工会議所ってトコに一応加盟して年間費を支払ってます。
              なので、「これこれ、こういう物を作って欲しいのですが、商工会議所に加盟されている業者さんを
              ご紹介いただけませんか?」と問い合わせた事があります。近ければ楽ですし、商工会議所の紹介なら
              お互い安心ですもんね。
              そしたらですね、そしたらですよ、

         「どの会社がどういう事業をされているか商工会議所では把握していませんから
            ご紹介出来ません」

              
               と言われました。
           やめちゃえ!

            私が飛び込みで工場を探し始めたのは、この翌日からでした。当てにしません。信じません。商工会議所。


            ついでに.....私、商工会議所から案内された健康診断を数年前受けまして、その際「胃の調子が悪いのですが」と
               検査医師に伝えました。問診表にもしっかり書きました。

               翌日、やはり調子が悪いので少し大きな病院へ行き検査を受けた所、「十二指腸潰瘍」と診断され治療が始まりました。
               
               それから数日後、健康診断の結果が届きましたが、そこには

               
「異常なし」と記載されていました。
           やめちまえ!(笑)

                  こんなんでどうでしょう?ご満足いただけましたか?(笑)
                                                                          2009年5月24日 追記