ウソつきエディと正規輸入品の巻      


             
 最近では雑誌インタビューなどで知られる様になりましたが、エディ・ヴァンへイレンは
スライダックで アンプへの電圧を上げているのではなく、下げていたのでした。
まぁ一部では、そんな高電圧を与えてアンプが耐えられるワケがない、と囁かれてはいましたが、
大半のファンは信じていたハズです。実際に試してみてトランス焼けちゃった人や
チューブが爆発(!)しちゃった人もいる事でしょう。大変危険なのでやめましょうね。

 そのインタビュー誌が出て以来、「俺は昔から電圧を下げていたぜ」なんて言い出だした
ギタリストもチラホラいらっしゃる様ですが、「?」ですね。むふふふ

 もう20年ぐらい前になりますが、TAKEさん(TENSAW)がTRAUMAの頃でしたかPlayer誌の
インタビューで 「エディが話す機材の話はウソばっかりだから信じちゃダメ」と仰っていました。
あの時代にそんな事を公の場で言う人はいなかったので、ちょっと蒼褪めましたが
さすがTAKEさん。正解でした。

 苦労して得た自分だけのトーンですから秘密を守る為にウソついても誰も責めないでしょう。
また、ちょっとぐらいミステリアスな部分があった方がキュン!としちゃって魅力的です。(笑)

 スティーヴィーレイの機材話も然りですね。ご本人が無頓着なのか意図的なのか
生前のインタビューでも結構「?」な話が多かったですし、亡くなってしまった今では
様々な人々の思惑や憶測が一人歩きして、もはや「都市伝説」です。
「TS-9を足元に置いてTS-808をアンプの裏に隠して使っていた」説 とかね。
ホントですか?私は話ばかりで写真で見た事がありません。
SRVのワウはマッコイピクチャー説もありますが、私が聴く限り少なくもライヴではトーマス製VOXの方が
近いような気がします。

 エディは電圧を下げる事でアンプのヴォリュームを更に上げる事ができ、
そのポイントでのみ得られる歪み具合を気に入っていたのでしょうね。
アンプに負荷を与えるのではなく、余裕を与えていたワケです。

            
 で、話変わって正規輸入品のお話。
ご存知の通り、100Vコンセントを使う正規輸入品には輸入元や100Vで使用する事を
示すシールが貼られています。
これに拘る方も結構いらっしゃる様で、まぁ本来のパフォーマンスを得る為に
変圧器を持ち歩くのは面倒だし、故障した時に正規輸入元では修理してもらえない、等
不安要素があるので当然といえば当然です。

 並行輸入商品の修理を正規輸入代理店が断るというのは当然の事ですが、今の時代
修理のできる所は沢山あるので、余程特殊で入手出来ないパーツでもない限り、
修理の面では心配要らないのではないでしょうか?

  では電圧の点はどうなんでしょう?
実は正規輸入品100Vとシールが貼られていても実際は100Vではない物が結構あります。
例えばMarshall。Marshallが100V仕様になったのは実は極最近の話で、MIDI機能の付いた
アニバーサリーモデル以降じゃなかったかと思います。電圧不足でMIDIの誤動作が
あった為だったと記憶しています。
それまではいくら正規輸入100Vと書かれたシールが付いていても実際は100V用トランスなんか
載ってません。

 Fenderもまた然り。最近の話です。
(最近っていってもおぢさんの言う「最近」は軽く10年ぐらい前を指しますけどね:汗)

 また、海外の小さなガレージブランドの製品を日本の輸入商社が代理店契約を結び
正規輸入した製品にもシールだけで実は100V仕様ではない物が現代でも沢山見受けられます。
小さなブランドがシェアの低い日本の為に専用のトランスを用意するのは困難でしょうし
輸入商社は楽器メーカーではないので、そこまでの指定もしない様です。
トランスの許容電圧以下で使用する分には危険はないですから、通産省で認可が降りれば
これはこれで法的にもOKなワケです。

 という事はあのシールは「100Vで本来のパフォーマンスが得られますよ〜」って意味ではなく
「100Vで使ってね」という意味なのかも知れません。
             
 では、必ず元々の電圧で使用しなければいけないのでしょうか?
設計者、製作者の意図、目指した音を体感したければそうすべきでしょう。
また前述のMIDI誤動作なんていうのはあってはならない事ですから
MIDIに限らず誤動作があるなら正しい電圧を与えるべきです。
デジタル物に電圧不足は厳しいでしょう。
(その誤動作で面白い効果があれば、それはそれでOKだと私は思いますが)
             

             

 ここから少し私のお話。
例えば1960年代ブラックフェイスのFenderアンプ。
当時100V仕様なんてありませんから当然117Vです。
でも少なくも私は100Vで鳴らす方が好きです。なんとなく117Vで鳴らすと
ミッド近辺の押しが強すぎて苦手です。マスタリング過多のCDみたいでちょっと疲れます。

 例えばオリジナルMatchless。過去に音を出した中でNo.1と思えるDC30は並行輸入物でした。
まぁ、Matchlessに関しては個体差も大きいので電圧だけが要因とは思えませんから
ここには相応しくないかも知れませんが。
当時センドリターンなんて余計な物が付いてたのは正規物だけでしたし。
             
 電圧ではありませんがバイアス値。某アンプの正規物を輸入元でチューブ交換してもらったら
音が変わってしまった、歪み具合が気持ち悪い、というお客さんの案件。
輸入元は「間違った事はしていませんからクレームは受けられません」との事。
ウチで計測すると正しいバイアス値。確かに何も間違ってません。が、見ると差換えで
3段階にバイアス値を変えられる仕様。 試しにバイアス値を上げてみたら、「戻った!」と。
             

              
 で、まぁ何が言いたいかというと、100V仕様に拘るあまり、見逃してる事・物ってないですか?

  大事なのは1枚のシールじゃなくて自分の耳。

  エディは電圧下げた方が気持ち良いと感じたから下げて使っていた、と。

             
 勿論個人差があるので、100Vの方がいいのか、117V、240Vがいいのかは
人それぞれ。中には117Vと240Vの切替が付いているイギリス製のアンプを
100V→117Vの変圧器を使ってアンプ側を117Vにするよりも、100V→240Vの
変圧器を使ってアンプ側を240Vにした方がハリが出て良いと感じる物もあります。
それらはぜ〜んぶ経験、TRYするしかないです。
時間も金かかります。(笑)でも

    ♪ロックンロールにゃゼニかかる〜

は、昔からの話です。最近はむしろ物価から考えれば安いぐらい。
Gibson LesPaul Customが45万円だった頃、バイトの自給は\350.でしたから
「一生買えないな、こりゃ」って思ってましたっけ。



 ネットサーフィンしたり本を読み漁って耳年増になる時間があったら、バイトして色々買ったり
試したり...経験した方が自分の肥しになるんじゃないかと、おぢさんは思うのです。
「書を捨てよ、街に出よ」ですね。100冊の本より1つの経験の方がずっと大きい。

ケンタウルスは初期ピクチャーが1番良い?そんなモンは都市伝説です。
もっと説得力のあるエピソードを私は知っています。
10台のケンタを並べて比較した事がありますか?私はあります。


 おぢさんより年上の先輩達、特にGS以降、70年代ROCK組の人達って凄く乱暴というか
マニュアルなんか絶対読まなそうな人ばっかりなので、(爆) ルール無用というか
信じてるのは自分の耳。だからメーカー、設計者が予想もしなかった使い方や
音が産まれて、それが新しい音楽に繋がり、個性に色を添えていた事も多かったと思います。

 ファズファクトリーはファズフェイスを作っていたら失敗して産まれたと聞きます。
コーラは元々風邪薬を作るつもりが失敗して清涼飲料水になったと聞きます。
間違ってたらごめんなさい。

 エレキ(う〜ん、なんて素敵な響き!)っていうかROCKが産まれて半世紀も過ぎると
なんだか習い事みたいになっちゃって、なんだか堅苦しいです。
自由なのがROCKぢゃん。(笑)
「エフェクターの接続順序はこうでなくてはいけません」
「こういう事はしてはいけません」
そんなモン信じません。むしろルールをぶち壊すのがROCKぢゃん。
間違った使い方して聴いた事ない様な音出ちゃったら素敵だと思いません?
それで機材が壊れちゃったり怪我しちゃっても、それは「経験」です。

 色々な人とお話をしていると、ROCK創生期の先輩方の方が発想が自由で
若い人の方が頭固くて固定観念がんじがらめで悩んじゃってる人が多かったりして
情報が多過ぎるのも問題だよなぁ、と感じます。

 「人と同じじゃイヤ!」って人と「人と同じってなんか安心〜」って人。
何かを生み出す、編出す人とそうでない人の違いって
そんな所じゃないかしらん?


 90年代に雑誌で「アナログのファズやディストーションエフェクターは9Vで鳴らすより
6Vぐらいに電圧の落ちた電池で鳴らす方がいい」って記事が出て、一斉に右に倣えで
6Vブームが訪れましたが、アンプに関してはそういう記事を見た記憶がないので
ちょいと書いてみましたが、勿論これが絶対ではありません。
(そういえば最近の内部昇圧ブーム、9V入れて内部で18Vとかに昇圧するエフェクターは
電池が完全に死ぬまで18Vを搾り出すというアルカリ電池みたいな動作なので安定はしていますが
電池の電圧が下がった時の音っていうのを味わえないのが欠点といえば欠点ですね)

「60年代フェンダーは100Vで鳴らす方がいいらしい」とか「初期マッチレスは平行物の
方がいいってサウンドロフトが言ってた」など短絡的な誤解はご勘弁
そんな事は言ってません。
(読解力の問題ですが、こういう機材面での話しをすると必ず誤解される方がいらっしゃいます。
 私がブログの類に手を出さないのはその辺が理由です。面倒臭いっていうのが1番ではありますが)

100Vで鳴らした方が良いと感じれば100V、117Vにした方が良いと感じるなら117Vに。
90Vが良ければ90Vにすればいいんです。
信ずるべきはシールじゃなく、雑誌でもなく、私の意見でもありません。
「あなたの耳と感性」。自分がどう感じるかって事です。
もしかしたらシールが無いってだけで、誰々が良くないって言ってたから、っていうだけで
素通りしたブツの中に、とんでもなく自分に合う機材があるかも知れないって勿体無いと
思いませんか....?


ダラダラと思いつくまま、脈略なく書きました。最後までお読みいただきありがとうございました。
                                                  2008/09/13




   *当ページに記載された内容は個人の経験談であり、推奨する物ではありません。
     使用方法の誤りにより事故、故障、怪我などが発生した場合、それらに関して
     当店では一切責任を負いません。試される方は個人の責任に於いて行って下さい。
     また、「私の使っているアンプは100V仕様ですか?」といったご質問は当店ではなく
     輸入元へお問合せ下さい。
    (てな事は当たり前の事なのに、一応書かなきゃいけない面倒臭い時代です:笑)



             


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