過管理社会　の巻

　昔むかし、（といっても昭和４０年代のお話）
あるところに老夫婦がおりました。
老夫婦は畳３畳ほどの家と呼ぶにはあまりに狭い
小屋の様な所に住んでおりました。
高度成長期とはいえ、日本はまだまだ貧しく
そういった小屋や防空壕跡を家に見立て生活している者が多くおりました。

　老夫婦は（といっても子供達には老夫婦に見えただけで本当はそれ程でもなかったのかも知れません）
段ボール等の古紙を回収し生計を立てていましたが、ある日夫婦揃って変わり果てた姿で発見されました。
しかし死亡時期には違いがあると判りました。まずおじいさんが病死した様なのですが
おばあさんは何もできず、こたつに座ったまま食を断ち、死を迎えたのではないか、という話でした。


　老夫婦の住んでいた家はすぐに取り壊され、あっという間に緑にのみ込まれました。
かつてそこに家があった事など誰も信じないであろう姿でありました。


　不憫に思った近所の者がその土地に白粉花の種を蒔きます。慰霊の意味を込めて。
翌年、そのまた翌年と白粉花は増え続け、かつて家があったその土地全てを覆いました。


　そこは丁度、小学校の通学路でもありました。
小学生たちは学校の行き帰りに白粉花の花を摘んで遊びます。
花の時期が過ぎたら今度は種を摘みます。
沢山摘んだ子が勝ちです。
女の子は種を潰して中の白粉を集めたり男の子は投げつけあったり。
ひと通り遊んだ後は辺りに投げ捨てます。自分の家の庭や公園、校庭などに蒔く子も多くおりました。


　そうして数年のうちに白粉花は通学路に沿って町中に広まりました。
町の人達は白粉花が咲いているのを見る度に老夫婦の事を思い出すのでした。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　おしまい









　オシマイ、じゃなくて（笑）
これは実話です。小学生達の内のひとりが私です。
忘れられない悲しいお話です。


　そして現代。
ジョニーが亡くなった後、ホームセンターで見つけたピンククラウドという名前の花の種。
その年の冬、お店の駐車場に蒔きました。
翌年の春、駐車場の脇はピンククラウドの花でいっぱいになりました。
種もたくさん取れましたので、ジョニーの死を嘆く同志達に送りつけたり（笑）しました。

　あの白粉花の様に日本中に広がればいいなと思ったのです。
花が咲く度にみんなジョニーを思い出してくれたら嬉しいな、って。

　店の前を通る子供達には自由に種を摘ませました。
あの白粉花の様に、町中ピンククラウドが咲いたら素晴らしいな、と思いました。
意外とメルヘンチックなワタシ。（笑）


　でもダメでした。
自分の家の庭に蒔いた子はいいのですが、公園やその周りに蒔いた子供達によると
「芽が出たんだけど，少し育った位の所で町内会か市役所のおじさん達が雑草と一緒に刈っちゃったみたい．．．．．」


だそうです。
なんだかな〜



＊当店商品お買上げのお客様でピンククラウドの種をご希望される方がいらっしゃれば差し上げます。
　 その時在庫（笑）していれば、の話ですが．．．．
　 ご注文の際、その旨お申し付け下さい。


2015年5月8日　記

中古屋のひとりごと　奇跡的に残っていたバックナンバーズ

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