ぶるれんじゃい!の巻


 少し前にRange masterクローン、Bull-Ranger Boosterをリリースしました。
レンジマスターに関しては個人的にもマニアックに知識が
あるわけでもありませんし、ここでは詳しく述べません。
(各自ググって下さい)が、伝説のギタリスト達がこぞって
愛用したブースターとして私が子供頃からその名を耳にしていた
エフェクターです。



 「クローン」........都合のいい言葉です。
流行ってるみたいなので使ってますけど、要はコピーですね。(笑)
いきなり脱線しますが、「トリビュートバンド」ってコトバも嫌いです。
「コピーバンド」でいいじゃん。
どれだけ再現度が高くてもコピーバンドはコピーバンド。
自信と覚悟があるなら胸張って「コピーバンドです」っていえばいいのに。




 レンジマスターのコピーは大昔.......店舗も無く手売りしていた時代にも
依頼を受けて作った事がありました。
当時でも現物入手は困難でしたし、ネットの無い時代でしたので
回路図を入手するのも難しかったですが、どうにか手に入れて製作したのでした。

依頼主さん...(といってもスタジオの仕事仲間ですけど:元気にしてる?)は
満足して下さったのですが、私的には「?」 な音でした。
確かにブーストはしてるけど.........


 時は流れ.........開業後、いくつかのメーカーからレンジマスターコピーの
ブースターが発売されました。
えらく高い物もありましたが、どれも「?」な音でした。
まぁ、昔作ったブツと同じ音の印象でしたので「間違ってなかったんだな」と
確認はできましたけど。


 更に時は流れ........2017年。強烈なキャラを持つお客さんが現れます。
そのお客さんが来る度に 「レンジマスター〜、レンジマスター〜」と騒ぐので
「そういえば大昔作ったっけなぁ」と洒落で1台作りました。

大昔との違いはネット時代である事と手元にOC44トランジスタがある事でした。
大昔入手した回路図には「PNP ゲルマ」程度しか情報がありませんでしたので
適当にゲルマを見繕って作りましたが、OC44やOC75が使われていた、
なんて情報は当時ありませんでした。


手元にあるOC44は、.数年前にトーンベンダーの修理を受けて.........
いくつかのゲルマトランジスタを試すも満足のいくトーンにならず
海外からOC44を入手、(当時でも凄く高価でした) 結果依頼主さんも満足の
修復ができ、「そのうち残ったOC44でトーンベンダーのコピーでも
作ろうっかな〜」と思ったまま、怠け者の私はOC44を引出しの中に
仕舞い込んだまま、放置していたのでした。


「んじゃ、あのOC44でレンジマスター組んでみっか〜」と
軽いノリで作ったのですが、大昔作ったブツとはまるで違う、
トンでもないブースターが出来上がりました。
アンプによるのですがファズの領域まで近づく、奇数も偶数も出ている様な
倍音感と強烈なサチュレーション感。
クラプトンじゃん!マークボランじゃん!ロリーギャラガーじゃん!
リッチーじゃん!トニーアイオミじゃん!ブライアンメイじゃん!
そしてバディガイ的でもあり、SRV的でもある!
確かにアンプを選ぶかも知れない、他のエフェクターとの組合せを拒む
頑固さも凄い。
「でもこの音は!」 


「どなたでもどうぞ」 と無菌培養で育ったかの様な
無個性極まりない現代のエフェクターとは全く違います。
「みんなと仲良くしましょう」感はゼロです。

久しぶりに高揚した私は「こりゃイカン!自分用も作ろう!」と
再び半田ごてを手にしたのでした。




そして....
「もしかして欲しい人他にもいるのかしらん?」
「知って欲しいなぁ、この音」
という事で、コンデンサなどを再検証、ブラッシュアップして
(お陰で原価はバン!と跳ね上がりました:涙)
一般リリースを決めました。
お陰様で予想よりずっと良いリアクションをいただいています。



 ですが手持ちのOC44には限りがあります。
先を見越して(先を見越す必要があるのかは「?」ですけど:笑)
OC44以外のトランジスタを試しました。
データを見比べたり、トーンベンダー、ファズフェイス等で使われたといわれる
「NKTなんちゃら」 とか 「ACなんちゃら」 から国産まで、
ヴィンテージゲルマを次から次へと試しました。



 結果はどれも大昔作った、あの音でした。
世に多くある、「クローンを謳っているけど違う音のエフェクター」と同じ。


私の中の「悪い虫」がザワザワし始めました。
「生き残っているゲルマトランジスタの中から探し出してやろうじゃないの!」


規格表と睨めっこ。似た物、同じ物を見つけると
それを持っていそうな業者さんに連絡→入手→試作→ダメだぁ、の繰り返し。
「こんな時に徹ちゃんがいたらもっとデータ手に入るし相談できるのになぁ」
と思いながらデータだけに頼らず、手持ちのゲルマも片っ端から試しました。
そして.........ボツになったゲルマの山が残りました。
1つだけ........これ、イケる!というブツがありましたが
OC44と同じ位、入手困難で数も揃わない海外の品種でした。



諦めかけたその時!
新たに2種類の国産ゲルマを見つけました。
国産とはいえ、データ的にも血統的にも相応しいブツといえます。


舶来品崇拝の日本人の中には「ケッ、国産かよ」と思う人もいる様ですが
フラットな思考の海外エフェクタービルダーには日本製の品質を
評価して積極的に採用している人も多くいます。


その内の1つが........まんまOC44トーン!
前述の海外品種より更に良い!
他を探しても何処にもこの型番は在庫が無い!
すぐに全てを買い占めました。
そして1つ1つ計測してBull-Rangerに適したブツを選別。
しばらくは製作を継続できる様になりました。


とはいえ、これも数に限りはあるんですけどね。(笑)
そして、これ以上にOC44トーンを持つ国産ゲルマは現存しない。
断言出来ます。その位、試しました。





 回路はシンプル。回路図はネット上にいくらでも転がっています。
腕に自信がある方であれば作れます。回路図通りには。
でもあの音を再現するのは物凄く難しいですよ。というお話でした。


 今日は2017年9月9日。
あなたがこのページをご覧になっている時、
Bull-Rangerの製作を続けられているのか判りませんが
もし気が向いたら......もし製作していたら..............是非お試し下さい。




 これでBull-Ranger Booster はひと段落。

 感性の鈍った、このジジイの体毛を逆立ててくれる様な未知のブツはまだある筈です。
次に私をワクワク、ザワザワさせてくれるブツはなんだろう?楽しみです!







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