Are You Experienced? の巻



 ジミヘンの話ぢゃないよ。(笑)


 自宅のステレオが壊れました。
店で1日中音楽かかっているし、家に帰ってまで音楽を聴くって事も少ないのですが
最近何度目かのアナログ(レコード)ブームが来まして。
ちょろちょろ使っていましたが、ある日突然右チャンネルのみ音が出なくなりました。

昔、1982〜3年頃 (え?1982年って32年前なの!? うぎょえ〜っ!)
バイト先で買ったプリメインアンプです。
当時の定価\59,800.(実売価4万くらい)でした。
当時サンスイだのSonyだの、名器とされるモデルが凌ぎを削っていた頃
このVictorを選んだのは.......多分外部入力端子がいっぱいあるから......だと思います。(笑)
生粋のオーディオマニアさんから見たら「ケッ!」ってなアンプでしょうが、\500.くらいの安い時給で
楽器のローンも払わなきゃいけない、毎日魅力的なAV機器を見ていれば当然欲しくなるし、で
大変な日々の中、身の丈に合ったブツがこれでした。


症状は.........
★スピーカーとヘッドフォンからは右chが出ない.
★CDレコーダーやカセットデッキ等の外部機器へは両方ch出力されている。

という事はプリ部には問題なく、パワー部の問題、という事が判ります。

とりあえず開けてみました。



なんて素敵なトランス!5kgくらいありそうです。今あるんですかね、こんなの使ってるアンプ。
現代のオーディオ事情には疎いのですが、超高級か安価なデジタル物かの二極化が激しそうで
自分に合った丁度いい機種を探すのは大変そうな気がします。これは楽器にもいえる事なんですけど..........
格差社会の産物か、中国製依存デフレの置土産か って事なんでしょう...........................かね?

楽器もAV機器もバイクも。この時代の物が現在高い評価を受けているのは当然な気がします。




で、回路。アナログは判り易い。(笑) 基盤見ればどこがプリ部で、どこがパワー部かなんて
一目瞭然です。特にこいつの場合はギターアンプより判り易い。
死にそうなのは......パワートランジスタを含むICとケミコンでしょうか。まずは1つ1つ目視。
破裂や液漏れが無いか半田割れが無いかチェックします。時間が経つとダメになったり
復旧するワケではないので、今回は急冷材の出番無しでいいかな。

う〜ん、なんともありません。「そ〜すっと1個ずつ基盤から外してチェック?面倒臭いなぁ」と思いながら
眺めていると、どうも気になるパーツが2つあります。

野生のカンがザワつきます。

ひとつはリレーみたいなキューブ状のブラックボックス。もうひとつはICみたいな平べったいヤツ。
特にこの平べったいヤツが妙に気になります。根拠はありません。
これが何なのか型番で調べると電圧-電流変換増幅モジュールである事が判りました。
プリとパワーの間で動作しているっぽい。ギターアンプでいうと「二段目のプリ」みたいな事?
怪しい。ますます怪しいですぞ。
電源を入れ、タッピング(デコピン)しても変化なし。半田も異常なし。熱ももっていない。
「こんなの外してみた所でテストの仕方も判んねぇしなぁ」と思いながらも
野生のカンは「コイツだ、コイツだ」と騒いでいます。
一方では、「でも普通で考えたら、こっちの最終的なデッカいパワーTr.じゃないの?」
右脳と左脳がバトルしてるみたいです。(笑)


調べるとこのパーツ、現在でも4000円くらいで手に入りそう。
ついでに調べるとアンプ自体はオークション等でジャンク1000円〜。「そりゃねぇよぉ〜」な、お値段。
安いか高いか、でいえば中古を買った方が安いし簡単。(それがまともに動けば、の話ですが)
野生のカンがハズレれば4000円丸損。
でもね、コイツ捨てンのも.......苦労して買ったしね。想い出もある。


パワーTr.だったらヒューズ飛んでもおかしくないし電源回りに燃えた跡もない...........その手前だとすれば.........
よし、野生のカンを信じよう!
ダメなら次を考える。4000円無駄になっても過程は楽しめる。経験にもなる。
楽器だ、オーディオだ、なんてぇのは所詮道楽。道楽はケチっちゃぁいけません。
(この時点で4000円は修理の為の4000円ではなく、過程を楽しむ為の4000円になっています。)


数日後パーツ到着。で、交換。


拍子抜けする程 あっさり治りました。

やはり犯人はコイツでした。


偉いぞ、俺の野生のカン。


でも、ホントに野生のカンだけなのでしょうか?



例えばプリ部なのかパワー部なのかのチェック。
興味も経験もなければ、こんな事すらせずに破棄でしょう。



例えば基盤のチェック。エフェクターだのギターアンプだのの修理をやっているから
一目瞭然なワケで。
実際ガッコで学んだ理屈より実戦・実践の方が大きいです。
Maxon AD230というアナログディレイなんて、信号ライン追いかけていくと1階の基盤から2階へ行って
そこからまた別の基盤に行って1階へ戻る、みたいな事があちこちであって。
「これ設計した人スゲーな」と感激した覚えがあります。



子供の頃から機械モノ買ってはバラしていじくって。当然沢山お釈迦にしました。
アマチュアの頃はギターアンプで感電なんて何度もありましたし、何本ものギターを
ダメにしました。でも全く後悔はしてません。その経験が私の財産です。


そういう経験が積み重なって野生のカンになっている、もしくは野生のカンを後押ししている様な気がするんです。
アンプやエフェクターの修理でも同じ事が度々起こります。
根拠ないのに 「ここだ、ここを調べろ」って声がする。
と〜るちゃん?来てるのかい?」と思う事もありますが、さすがにそこまでいくとオカルトチックです。(苦笑)
(でも.....4耐の時の巨摩 郡が如く研ぎ澄まされた感じがする時なんて、不良部品を思われる所以外の
フォーカスがボケて見えたりします。怖っ!)


その経験ってヤツは、いくら本を読んでもネットサーフィンしても得られない物なんじゃないかなぁ。な〜んてね。
だって本当の意味でヴィンテージFenderアンプの艶やかなトーンや、HIWATTの音圧感はYoutubeじゃ伝わらないし
グランドキャニオンの雄大さはどれだけ引き延ばしても写真じゃ判らないでしょう?


この「ひとりごと」のページでも過去何度か出て来たワード、

★100冊の本より1度の経験(書を捨てよ、街に出よ)
★100の知識より1回のピッキング
★ぐちゃぐちゃ言ってないで、とりあえずやってみよう


って事なんじゃないかと思うんです。


で、「俺、無理」 とか「俺はプレイヤーだし」 とか「やってみたらクッチャクチャになっちった」って人の為に
我々プロがいるワケです。



 プロ...................
未だ日本人は意識が希薄ですが、プロの技術屋.........大工でもペンキ屋でも
電気技術者でも楽器製作者でも...................は授業料という投資をして知識を得て
現場では丁稚奉公の様に安い賃金で下積み経験をし、一人前になってようやく対価を得て
飯を食っているワケです。
だから私は、例えばガス工事の人に「あなたの仕事のノウハウ教えて、タダで。」とは
絶対言わないです。
同級生に水道屋がいても値切りません。(トシちゃん元気?:笑)
そんな破廉恥な事、私には出来ません。また私にそういった事を求める人は
私の中でランキング大幅ダウン。以降それなりの対応しかしません。




まぁ、人ひとりが人生の中で得られるキャパにも制限あると思いますしね。
Charさんなんて自分で弦張り替えできない、っていうじゃないですか。
でもそれをバカにする人なんていないでしょう?
あの人は「ギタープレイヤー」であって、ギターテックでもリペアマンでもない、という
究極のエピソードだと思います。


ひとつの道を究めるに人生は短すぎる、と仰った方がいらっしゃいます。


「家一軒ひとりで建てられる」 なんて言ってる職人はひとつひとつの仕事を見ると大抵大したことない。
「なんでも出来る人」って言う人は、実は何も出来ない。
外部の専門職人に仕事割り振ってピンハネしてるだけのリフォーム業者なんて大抵クソだし。(笑)
現場に来た専門の職人がこっそり手法なり工法なりを変えてるのを何度も見ました。
「餅は餅屋」 とはよく言ったもんだ、と思います。





(今回も:笑)話がとっ散らかってしまいましたが今回は

*音楽とは道楽である。ケチの道楽は無粋である。
*経験には投資が必要で怪我(リスク)も付きものである。そして怪我も経験となり、経験は人生を豊かにする。
*投資もリスクも負わず事を済ませ様とすれば、いずれツケがまわってくる。
*自分を客観的に見て、それが破廉恥な行為でないか考えてから行動すべきである。
*人生には(容量・時間といった)制限がある。どの道を極めたいのか、よく考えるべきである。
*サウンドロフトでは時々オカルトチックな事が起きるらしい。

というお話でした。(?)





注意!:電気機器には死亡事故を引き起こす程の高い電圧がかかっている箇所があります。
     知識:経験・資格の無い人に危険な作業を推奨しているわけではありません。
      死亡・怪我等の事故が発生した場合でも当店は一切責任を負いません。



中古屋のひとりごと 奇跡的に残っていたバックナンバーズ


商品に関するご質問などは.....
TEL 0463-93-5484
Mail info@sound-loft.com
までお気軽にどうぞ!
メール受信設定についてのお願い

ご注文の際は こちらのページをご覧ください。

掲載の画像は撮影状況やお使いのモニターの特性によって
現物とはややニュアンスが異なる場合がございます。
予めご了承下さい。


Sound Loft
URL http://www.sound-loft.com

〒259-1114 神奈川県伊勢原市高森6-1581-13
TEL/FAX 0463-93-5484

当店MAP こちらからどうぞ!